『美食の国』フランスの誕生 ブランド確立にガストロノミーが背中を刺し止める
フランス料理は世界的に認められた「美食」の地位をどのように築いたのか。主に19~20世紀にかけてのフランスの食文化の歴史をたどり、その理由を解き明かす「『美食の国』フランスの誕生」梶谷彩子著。この学術書は、博士論文をもとにしている。
ガストロノミーという言葉は、「美食学」とも訳される仏語で、「食べる」ではなく、味覚を研ぎ澄ませる訓練を積んだうえで食生活を送り、料理や食卓作法に美しい形式を与えることで快楽を生み出すためのものだ。フランスならではの考え方だ。
その歴史は19世紀に花開く。この時期はベルサイユ宮殿の王侯貴族たちが追求した美食が、フランス革命を契機に宮廷の外へと飛び出した。革命後の1825年には、美食家のブリア=サバランが一文で知られる『美味礼讃』を出版し、美食を言語化し、喧伝する「ガストロノミーの書物」というメディアが流行した。パリにはレストラン黄金時代が到来して、「美食の都」となった。
20世紀に入ると、ガストロノミーとツーリズムの連携がフランスを「美食の国」へと押し上げていく。技術革新や社会情勢の変化は「地方振興」と旅行の普及を促した。地方料理が見直され、ガイドブックが誕生。なかでも『ミシュランガイド』は日本でも知られた現代の権威だ。
フランス料理の世界的なブランドの確立は、ガストロノミーによる裏付けがあってこそ。その後、料理は食べれば消える瞬間芸術だが、それを記録し、評価する美食家たちが存在したことで「食べる」という基本的な生活行動が広く文化にまで昇華されていく。
ガストロノミーの歴史からは、ブランディング戦略におけるメディアの重要性についても考えさせられる。
				
			フランス料理は世界的に認められた「美食」の地位をどのように築いたのか。主に19~20世紀にかけてのフランスの食文化の歴史をたどり、その理由を解き明かす「『美食の国』フランスの誕生」梶谷彩子著。この学術書は、博士論文をもとにしている。
ガストロノミーという言葉は、「美食学」とも訳される仏語で、「食べる」ではなく、味覚を研ぎ澄ませる訓練を積んだうえで食生活を送り、料理や食卓作法に美しい形式を与えることで快楽を生み出すためのものだ。フランスならではの考え方だ。
その歴史は19世紀に花開く。この時期はベルサイユ宮殿の王侯貴族たちが追求した美食が、フランス革命を契機に宮廷の外へと飛び出した。革命後の1825年には、美食家のブリア=サバランが一文で知られる『美味礼讃』を出版し、美食を言語化し、喧伝する「ガストロノミーの書物」というメディアが流行した。パリにはレストラン黄金時代が到来して、「美食の都」となった。
20世紀に入ると、ガストロノミーとツーリズムの連携がフランスを「美食の国」へと押し上げていく。技術革新や社会情勢の変化は「地方振興」と旅行の普及を促した。地方料理が見直され、ガイドブックが誕生。なかでも『ミシュランガイド』は日本でも知られた現代の権威だ。
フランス料理の世界的なブランドの確立は、ガストロノミーによる裏付けがあってこそ。その後、料理は食べれば消える瞬間芸術だが、それを記録し、評価する美食家たちが存在したことで「食べる」という基本的な生活行動が広く文化にまで昇華されていく。
ガストロノミーの歴史からは、ブランディング戦略におけるメディアの重要性についても考えさせられる。