愛媛大大学院の高田昌嗣准教授は、東京農工大大学院の梶田真也教授とともに、樹木の細胞壁を構成するリグニンに新たな発色団構造を導入し、発光性を持たせることに成功した。環境センシングやスマート材料など、幅広い応用が期待される。
彼らの研究グループは、細胞壁として植物の構造を支えるリグニンに紫外線を当てると吸収し、一部は目に見える波長に変換する特性に着目した。ポプラのリグニン分子内に、さらに発光性を持つ植物由来の化合物「スコポレチン」を遺伝子組み換え技術で導入し、発光特性の大幅向上を試みた。
この結果、通常のリグニンが示す発光は大部分が目に見えない紫外線で、一部でうっすらとした青紫色の波長を示すにとどまるのに対し、スコポレチンを導入したリグニンは多くが目に見える光域となり、緑がかった青色の波長を示すことがスペクトル分析で分かった。リグニン分子内に新たな発色団構造が形成され、発光特性を遺伝子レベルで制御する可能性を示すものだという。
従来のリグニンは水になじみにくい油など疎水性の溶媒中では凝集し、光が消失する「消光現象」が知られていた。だが、スコポレチンを導入したリグニンはスコポレチンが分子内にランダムに存在して距離を保ち、光が容易に消えないことも分かった。
このリグニンは強いアルカリ性(pH11)の条件下で発光強度が約10倍に増え、酸性(pH3)では減ることも確認された。さらに、特定の波長の光を照射すると、分子2個が結合する「光二量化(こうにりょうか)反応」を示すことが分かった。天然芳香族高分子では初の報告とされる。
研究グループは、この成果を国際学術誌「プラント・バイオテクノロジー・ジャーナル」に掲載した。高田准教授は今後の研究で、分子生物学と光化学を掛け合わせた新しい分野を目指している。そして、この知見が蛍光センサー、形状記憶材料など、材料科学や環境技術、バイオテクノロジーなどさまざまな分野に貢献することを期待している。
彼らの研究グループは、細胞壁として植物の構造を支えるリグニンに紫外線を当てると吸収し、一部は目に見える波長に変換する特性に着目した。ポプラのリグニン分子内に、さらに発光性を持つ植物由来の化合物「スコポレチン」を遺伝子組み換え技術で導入し、発光特性の大幅向上を試みた。
この結果、通常のリグニンが示す発光は大部分が目に見えない紫外線で、一部でうっすらとした青紫色の波長を示すにとどまるのに対し、スコポレチンを導入したリグニンは多くが目に見える光域となり、緑がかった青色の波長を示すことがスペクトル分析で分かった。リグニン分子内に新たな発色団構造が形成され、発光特性を遺伝子レベルで制御する可能性を示すものだという。
従来のリグニンは水になじみにくい油など疎水性の溶媒中では凝集し、光が消失する「消光現象」が知られていた。だが、スコポレチンを導入したリグニンはスコポレチンが分子内にランダムに存在して距離を保ち、光が容易に消えないことも分かった。
このリグニンは強いアルカリ性(pH11)の条件下で発光強度が約10倍に増え、酸性(pH3)では減ることも確認された。さらに、特定の波長の光を照射すると、分子2個が結合する「光二量化(こうにりょうか)反応」を示すことが分かった。天然芳香族高分子では初の報告とされる。
研究グループは、この成果を国際学術誌「プラント・バイオテクノロジー・ジャーナル」に掲載した。高田准教授は今後の研究で、分子生物学と光化学を掛け合わせた新しい分野を目指している。そして、この知見が蛍光センサー、形状記憶材料など、材料科学や環境技術、バイオテクノロジーなどさまざまな分野に貢献することを期待している。